板子一枚下は地獄

凪太です。京都にある大学院で学生生活の延長戦を過ごしてます。

『ジャミリャー(Джамиля)』を観た

2021年12/10~12/16まで出町座で開催されている「中央アジア今昔映画祭」に赴いてきた。

trenova.jp

今回見たのは『ジャミリャー(Джамиля)』という作品。

1968年にクルグズスタン(キルギス)で公開され、原作はクルグズスタンの国民的作家のチンギス・アイトマートフによって執筆されている。

 

舞台はソ連の一部となったクルグズスタンの村。

第二次世界大戦が開戦し、村の成人男性は徴兵されている様子がうかがえる。力仕事の担い手が慢性的に不足しているようである。

コルホーズ(集団農場)での生産ノルマに追われつつも、広大な草原や馬や羊などの家畜とともに生活している人々の姿がありありと描写されている。

 

以下、中央アジア今昔映画祭の公式サイトにあるあらすじを記載する。

出征した夫を待つジャミリャーは、夫の弟である少年セイトたちと暮らしている。彼女のことが大好きなセイトは、男達が近づくと割って入り邪魔をする。彼女は悲しみと孤独に苦悩しつつも明るく振舞っていたが、村に負傷兵ダニヤルが現れ、心が揺れはじめる。やがて二人の魂は結びついていき…

 

少年セイトはおそらく10歳~12歳ぐらい?義理の姉であるジャミリャーに初恋している、純朴な少年。

当初セイトはいきなり現れたダニヤルにちょっかいをかけたりするのだが、夫の手紙に自分の記述が少なく心配になっているジャミリャーがダニヤルの真面目さに惹かれ、セイトも寡黙なダニヤルを心配し始めたりする。

ネタバレになるのだが、夫が帰ってくる日にジャミリャーとダニヤルは村を出奔し駆け落ちする。

2人が去っていく姿をみたセイトが、そこで初めてジャミリャーに恋していることに気づき、草原で号泣する…

 

いやキッツいな...……(最近は脳が疲れてハピエン作品しか受け付けないので)

 

しかもその後、村ではジャミリャーとダニヤルを捜索(2人のためではなく、村の沽券のため、詳しくは後述)しようとするのだが、セイトは兄(ジャミリャーの夫)に殴られても彼らの居場所を言わなかった。

セイトは2人の幸せを願っていたのである。

セイトは画家を志して村を離れ、物語は終わる。

 

ちなみになぜ村の人々がジャミリャーの駆け落ちに怒ったかは、ジャミリャーが他の村から嫁いできたという背景にある。中央アジア遊牧民における結婚はいわば村同士の契約に近い側面があり、しかも村の男性が裏切られた形になれば、面目は潰れてしまう。このため、村の人々はダニヤルに対して殺意をもって捜索していた。

このあたりの文化は、森薫の『乙嫁語り』で非常に楽しく知れる(筆者は厳密な知識を持ち合わせていないため、これから勉強していく所存である)

 

ソ連時代の映画なんて見たことがなかったので、正直見くびっていたがその認識を改めざるを得なかった。躍動し、草原を駆ける馬になんとか食らいつこうとするカメラワーク、緊迫感のあるシーンの演出、出演者の演技など、すべてが高レベルだった。

いきなりクルグズスタンの国民的英雄「マナス」が出てきたりして、ナショナリティに訴えかけてくる描写もあるのは面白かった。

 

なお、版元のモスフィルムの公式YouTubeチャンネルで全編アップロードされているので、気に入った方はぜひ!

www.youtube.com